女教師Aの小部屋R

あちこち行ったり観たり食べたり

型を破るつもりなら型を習得しないといけないっていう例のアレ『イントゥ・ザ・ウッズ』

開幕してあんまりにツイッターに悪い評判しか流れてこなくていっそ気になってみてきました(趣味が悪いな!)これまでもミュージカル初挑戦というかそもそも舞台が初挑戦!みたいな人をメインに据えて事故った例ってあると思うんですけど、それとはどうもちがうな…という感触でした。

 

パン屋の夫妻は子どもが授からない理由が隣に住んでいる魔女の呪いだと知って、その呪いをとくために必要なアイテムを集めるが…という出だしで、今では定番となってるようなおとぎ話の登場人物がクロスオーバーする作品。出てくるのはジャックの豆の木、赤ずきん、シンデレラ、ラプンツェル。オリジナルのキャラクターは前述のパン屋の夫妻と魔女と、あとはストーリーテラーの男性くらいでは?という感じでまあまあオタクならなじみがある感じの構成の物語っすね…という印象なわけです。パン屋がかけられた呪いは親の因果が子に報うってやつなのでその辺もおとぎ話っぽさあるなあという感じだし、おとぎ話の登場人物が実際の話と違う行動をしたらみたいなのも2022年の今となっては馴染みのある展開なので、それはいいとして(そもそも1987年初演の作品ですし)問題はこれがミュージカルなのにミュージカルやったことない人をメインキャストに何人か据えちゃったってところなんですよ。演出家なにしてんのですよ。それぞれ役者としてのキャリアはあるんだろうな、という感じなので所作とか立ち姿はいい感じなのに歌うとぶち壊しというか…歌うための発声と芝居の発声て違うじゃないですか。それが出来ていない人をメインにおいてお金をとる興行を打つって無理があるのでは…と思いながらみました。魔女役のだいもん(望海風斗さん)は自由自在に舞台をがっつり支配してたけど、例えばシンデレラは旋律の正解がわからないまま終わったし、パン屋の夫妻もやけくそなのかな…?くらいの歌なわけですよ頑張ってるのはわかるんですけど。これならいっそパン屋の夫妻は歌わずに台詞だけで芝居をまわして(おとぎ話の登場人物ではない普通の人だからうたわない、みたいな理屈がつけられなくもないじゃん)シンデレラはもう一人のシンデレラが歌う、みたいなんでもいけたんでは…いやシンデレラなんでいきなり分裂してんのかよくわかんないけど宝塚版『風と共に去りぬ』に出てくるスカーレットの影みたいな感じと思えばまあいいわけだし…。ソンドハイムの楽曲、簡単ではないと思うけどちゃんとレッスン積んでる人なら歌えるんじゃん…ということは今までのブロードウェイとか映画化とかでわかってることなので。

 

王子二人の歌う「アゴニー」とかものすごく耳に残って次の週わりと脳内で再生されたのにもったいねーな…という感じでした。ミュージカルの演出家はちゃんとミュージカルの演出してほしい。キャスト発表になったくらいのネット記事でもはや普通のミュージカルではない、みたいなことがかかれてて「そもそも普通のミュージカルとは…」みたいな気持ちになったんだけど、普通のミュージカルができるようになってからそうじゃないことをしてほしいですよ。

 

以下ぽつぽつと思ったこと。

赤ずきん役の羽野晶紀さんがけっこうガチャっとした声でそのまま歌いはじめて最後までそれで通してた。かなりのどに負担かかりそうだけどあれすごいな。しかし赤ずきんのやさぐれっぷりはあそこまでやらんでもよかったんじゃないのかなあ。やや悪意っていうかミソジニーを感じる…

・だいもんはむっちゃだいもんだった。本領発揮ですわ!(関西弁語尾のわ)みたいに生き生きしてたけどこれでいいのか問い詰めたい気持ちはある

・シンデレラの継母・義姉チームはおさすが。久しぶりにワタさん(湖月わたるさん)の美脚が拝めてうれしかったです

・王子の片方なんか見たことある人だな…と思ったら『ウエイトレス』でアールをやっていた渡辺大輔さんだった。なるほどクズい…(褒めてる)

ストーリーテラーが退場しちゃったらオチがどうなるか、という話でもある気がする

・麻美れいさんの巨人の妻は声だけなのにむっちゃ巨人ぽかったけど、録音(同時期に別箱出てるし録音だよね?)でやるくらいなら別の人、たとえばスイングの誰かが影ナレやっても面白かったんじゃないのかなあというような気がしている